中国がシリコンバレーとつながるとき

中国がシリコンバレーとつながるとき
中国発出全球人材信息網
遠藤誉著
発行元/日経BP社
「知の競争の時代」と言われる21世紀、世界各地で活躍する中国人の頭脳を1つに結ぶ中国の”人材資源国家戦略”により、世界地図は大きく塗り替えられる可能性がある!
中国では今、世界各国に留学し、世界各地で活躍する”中国の頭脳”と知のネットワークを築くという国家戦略を推進している。その大きな狙いは、WTO加盟後の環境の変化に対応するための人材確保だ。海外の事情に詳しく、最先端の知識と技術を持つ人材の力を得て、国有企業、農業など、加盟後に大きな打撃を受けるであろう領域をカバーし、新産業構造への転換を図ろうとしている。
中国の"人材資源国家戦略"の重要な柱の1つが、「留学人員創業パーク」である。これは海外留学を終えた人々が、ベンチャービジネスを興そうとした時、中国政府が非常に有利な条件で施設や資金を提供しようというもの。利用に際しては厳しい審査があるが、これをパスすれば税金の減免、家族べの宿舎の提供など、至れり尽くせりの優遇策を受けることができる。
そして、もう1つの柱が「科学技術交流会」である。これは海外留学から戻った人材と企業の交流の場で、留学経験者が自分の研究成果や技術などを披露し、それに対し企業が評価を行う。産業化の価値があるとされた研究に対しては投資が行われる。
こうした国内の動きに、海外在住の中国人も呼応している。その筆頭が、シリコンバレーのSCOBAという組織だ。ベンチャー経営者からなるこの組織のメンバーの一部には、中国政府の国策に関与する者もいるなど、重要な存在となっている。彼らを貴重な人材として高く評価する祖国に対し、彼らは胸を熱くし、祖国のために全力を尽くそうとしている。
現在、中国の技術は急激に進歩しているが、その背景には大胆な教育改革と人材資源国家戦略に基づく知のグローバル・ネットワーク戦略がある。一方、日本では大学生の学力低下が叫ばれながらも、「知の改革」が行われていない。これでは、いずれ全ての面で中国の後塵を拝することになる。