エシュロン

エシュロン
アメリカの世界支配と情報戦略
産経新聞特別取材班著
発行元/角川書店

ウサマ・ビンラーディンも傍受されていた!世界全体で1時間に数百万の通信を傍受・分析するシステム、「エシュロン」の真相に迫る。
エシュロンとは、アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの英語圏5力国が共同運用する衛星通信傍受システムのこと。冷戦期には1日ソ連・共産圏を対象とする軍事目的に使われていたが、冷戦終結とともに世界各国の外交・経済情報の収集や、テロリスト・麻薬組織の摘発に利用されるようになった。
アメリカも他の4力国もエシュロンの存在を認めていないが、EU(欧州連合)の報告書によれば、大型アンテナを備えた通信傍受施設が世界に11カ所、解析などを行う関連施設が9カ所ある。
その1つは青森県の米軍三沢基地にある。このネットワークにより、エシュロンは世界全体で1時間あたり数百万の通信を傍受し、有用な情報を選別する能力があると見られる。
ただし、"世界中のあらゆる電話、ファクス、データ通信を傍受している"という説は間違いで、「通信衛星を経由する国際通信」が主対象である。また電話に関しても、技術的な制約から、会話内容を機械で同時解析する段階にまでは至っていない。
アメリカがエシュロンで得た情報を自国企業に流しているという「産業スパイ疑惑」は、EUの報告書によって注目を集めるところとなった。また日本についても、海外プロジェクトへの入札や日米自動車協議に関する事前情報などが、エシュロンで傍受されていたとする具体的指摘がある。
エシュロンの背後には、今後の世界の政治・経済情勢のカギとなる「情報戦」を制しようとするアメリカの戦略がある。これに対しEUは、情報の保護という自衛策と、プライバシー侵害を防ぐ国際的枠組みという構想を打ち出している。ただしEU側も情報活動を否定してはおらず、ほぼ各国が国外の通信を対象とした傍受を行っている。日本も情報保護に関する戦略を持たないと、今後の致命的弱点になりかねない。