恐慌の罠

恐慌の罠
なぜ政策を間違えつづけるのか
ポール・クルーグマン著
中岡望訳
発行元/中央公論新社

日本は恐慌の、そして世界は大不況の一歩手前たある!国際経済学の第一人者が、過ちを犯し続ける政策担当者たちを痛烈に批判、危機回避のための方策を指し示す。
本書は、ポール・クルーグマン教授の論文およびインタビューを収録したものである。教授は、「日本経済は、今となってはデフレ・スパイラルを阻止するのは非常に困難」と指摘した上で、その回避策として、「インフレターゲット論」を展開する。
日本経済の長期にわたる「リセッション(景気後退局面)」は、「高い貯蓄率」「少子高齢化の進行」という2つの構造的な要因により生じたものであり、..「起こるべくして起こった」事態である。
政府・大蔵省の度重なる経済政策の失敗により、もはや政策の選択肢はほとんど残されていない。その結果、日本経済は需要がさらに低下し、加速度的に物価が下落する、本格的な不況「デフレ・スパイラル」に陥る危険性が高まっている。
現在、日本に残された危機回避法は「インフレターゲット政策」である。イギリスのように2.5%というインフレターゲットを設定して、為替相場を円安に誘導し、長期国債の利回りを引き下げなければならない。
日本政府は、公共支出を増やして需要を創出する「ケインズ政策」を追求してきたが、ケインズ政策は、短期的に、収縮した経済規模を元に戻すことはできても、長期的な問題を解決することはできない。ケインズ政策を忘れ、代わりに「インフレ的な金融政策」を採らなければならない。
小泉首相が唱える構造改革政策は、日本を悲劇へと導きかねない。財政抑制は需要を減少させることになり、現在のリセッションをさらに悪化させる可能性が高い。また金融機関の改革が進み、金融機関が健全になったとしても、銀行が企業に融資を増やすとは限らない。むしろ銀行は、これまで以上に融資条件を厳しくすることで企業を倒産に追い込む可能性すらある。銀行は良質な借り手しか融資をしたくないからだ。