合併人事

合併人事
三神万里子/細田浩之共著
発行元/翔泳社
合併人事では何が起き、誰が切られるのか?合併現場を体験した人事コンサルタントと、合併企業50社を取材したジャーナリストが、合併人事の「エゴ」と「ロジック」を明らかにする!
「日本企業同士の合併は5%しか成功していない」とさえ言われるほど、企業合併は大きな困難を伴うものである。その最大の原因は、「人材を適正に評価して統合すること」の難しさにある。
しかも現在日本で起きている合併の多くは、とりわけ「業務の重複」の多い競合企業同士による「水平合併」である。この場合、企業文化の衝突と人員削減の恐れは特に強いものとなる。
外資系企業の場合は、日本企業の約3倍ものスピードで統合作業を進める。人員削減の対象者の絞り込みが、台併交渉前から始まることすらあるほどだ。
外資系企業も日本企業も、制度上は早期希望退職でも、内実は指名解雇同然の場合がある。しかし、人員削減はキャリアアップのチャンスでもある。有能な上位2割の人材にとっては転職で新天地を切り開く契機になるし、中間層にとっても、上層部が抜けることでプロジェクトを任されたりするチャンスが巡ってくる。
合併時の人事において、特に重視されるのは「人的資質」、すなわち「継続して結果を出せる人材としての信頼性」だ。なぜなら、合併によって仕事の進め方や競争のルールも変わるため、それまでの"役割に従った仕事"の評価は通用しなくなるからである。
基本的な「人的資質」とは具体的には、困難なことでもやり抜く力、環境が変わっても良好な対人関係を作れる力、自分よりチームの利益を優先させる度量などのことである。
従って、これまで優秀と思われてきた人でも、その優秀さが合併後も通用するかどうかを考えておく必要がある。例えば、「なぜ優秀と思われていたのか」「なぜ結果を出してこられたのか」「これからどんな失敗の可能1生があるのか」といった点を、これまでの人脈や情報網との関係を踏まえて分析する。こうした作業により、合併の激動期を自らのために活かす道が開けてくる。