中国に再び喰われる日本企業

中国に再び喰われる日本企業
青木直人著
発行元/小学館(小学館文庫)

日本企業はなぜ中国で成功できないのか?WTO加盟が中国に与える真の影響とは何なのか?綿密な取材をもとに、中国の今を浮き彫りにする衝撃のレボート!
WTO(国際貿易機関)への加盟を機に、中国市場に対する期待が高まっている。しかし、その実態を知ることなく、安易に進出すると、手痛い失敗を被りかねない。
市場経済の哲学は、"約束を讐尋する"ことである。だが、中国は市場経済を掲げるものの、平気で約束を破り、ごまかす。98年に破綻した広東国際信託投資公司の場合、広東省政府が破綻の際の保証をするという公文書を出していながら、その約束は破られた。
中国経済を見る時、経済成長率や輸出総:量の伸びなど、「量」については注目されるが、「質」は見落とされることが多い。日本企業が注目する労働力についても同様である。確かに、中国内陸部には億単位の安価な余剰労働力があるものの、一方では、億単位の非識字者がいるため、質の面ではあまり期待することはできない。
WTO加盟により、今後、中国は日本の輸出産業の最大の"得意客"になるという説がある。だが、中国人の平均収入は日本の約20分の1。それを思えば、市場規模を過大視するべきではない。
中国経済の「闇」の1つが、違法なコピー商品である。中国市場における日系企業の工業製品の年間総売上高3兆4,000億円のうち、コピー被害はその約3割、8,500億円にも及ぶ。なぜこれほどニセモノが氾濫するかというと、地域の利益を最優先する地方政府が、それら"摸造品産業"を保護しているからだ。
中国4大銀行のうち、中国銀行以外は膨大な不良債権がある。そのため外国銀行への預金が解禁される5年後、国民の預金が4大銀行から大量に流出する可能性が高い。そうなると、国有企業を支える原資が失われ、国有企業は倒産、失業者はさらに増える。
このようにWTO加盟によって、本格的なグローバリゼーションの波にさらされる中国では、今後、弱者の淘汰が始まり、社会は不安定化する。従って、今はまだ進出を急ぐべきではない。