ワークシェアリング

ワークシェアリング
『オランダ・ウェイ』に学ぶ日本型雇用革命
根本孝著
発行元/ビジネス社
雇用創出、失業率低下の切り札としてクローズ・アップされている「ワークシェアリング」。パートタイム労働を軸に"雇用改革"、"生き方革命"を進めている先進国オランダの実態に迫る。
わが国では今、「仕事の分かち合い」で雇用の維持・創出を図ろうとする「ワークシェアリング」導入論議が活発化している。そんな中、注目されているのが、12%の高失業率にあった1982年に雇用改革をスタートし、現在、失業率が世界最低水準にあるオランダのやり方である。
オランダでは、82~99年の15年間、サービス業による吸収を中心に、EU諸国や米国を上回る雇用創出があった。そして、この雇用創出において大きく寄与したのがパートタイム労働の増加、つまり1人あたりの労働時間の減少である。すなわち、オランダのワークシェアリングは1パートタイム労働を主とするものである。
オランダの雇用改革は、賃上げの抑制、社会保障の効率化、行政の効率化など、まさに"聖域なき雇用改革"と呼べるものであり、それは政労使間で結ばれた「ワッセナー合意」を出発点とする。
オランダのパートタイム労働者は、「労働時間が短いだけの正社員」である。時間あたりの賃金は正社員と同額、社会保険や、育児・介護休暇も同じ条件で付与される。2000年からは、パートタイムからフルタイム労働、あるいはその逆の選択も可能になった。
アメリカでは夫婦揃ってフルタイム労働をする「ダブル・インカム」世帯が主流だが、オランダでは夫婦のどちらかがフルタイムだともう一方がパートタイムという、「セミダブル・インカム」世帯が全体の半分近くを占める。
オランダ人の労働時間は、米国や日本と比べて年間500時間も短い。その根底には、家庭生活を極めて大切にする生活観がある。
これまで日本はアメリカのライフスタイルを目指してきたが、このようなオランダ人の価値観や、イタリアの「スローフード・スローライフ」の価値観などからも学ぶ必要がある。