自分の人生に出会うための言葉

自分の人生に出会うための言葉
ローマ皇帝マルクス・アウレリウスの人生訓
マーク・フォステイター著
池田雅之/高井清子共訳
発行元/草思社

満たされない自分の心とどう向き合えばよいのか。
日々の暮らしに悩む人々に向け、哲人皇帝マルクス・アウレリウスが贈る、"心を鍛える"ためのメッセージ!
ローマ皇帝の1人、マルクス・アウレリウスは、皇帝であると同時に哲学者でもあった。彼は日々の出来事に対する自分の行動を洞察し、今日『自省録』として伝わる言葉を残した。本書は、その言葉と併せ、マルクス帝の人物像、その哲学などを紹介するものである。
マルクス・アウレリウスの統治時代、ローマ帝国は黄金時代ではあったが、国境は常に異民族の攻撃にさらされ、絶えず戦争が起こっていた。そんな中、彼は日々わが身に降りかかる様々な出来事を、それまでに学んだ"哲学"で解釈しようとした。
マルクス帝が心のよりどころとしたその哲学とは、ギリシア哲学の一派、"ストア派"を代表するエピクテトスの著書から学んだものである。エピクテトスは、人が生きていく上において「信条」は不可欠だと考えた。なぜかというと、信条があれば、人生でどんな場面に遭遇したとしても、その信条に沿って正しい行動をとることができるからだ。つまり、人生に振り回されることなく、生きることができるのである。
また、人生を考える時、「自分の力で何とかなるものをコントロールすること」が重要である。それは、判断、意見、欲望など数少ないが、それらに自分の意志を反映させて、自由に考え、自由に行動することこそが幸せの基本である、とする。
マルクス帝は、このエピクテトスに代表されるストア哲学の思想「人間は内なる自然の声を聞き、その自然に即して生きられれば、充実した人生が送れる」という考えを自分の人生にあてはめて徳高く生きた。彼は、他の聖人や宗教家のように、来世の実在やユートピアへの夢想などを説いたりはしなかった。哲学を実践し、バランスのとれた真摯な生き方をすることで、人間の究極的な幸せとは何かを明確に示した。それゆえ、彼が残した言葉の数々は真実に溢れ、今に生きる我々の心をも揺さぶるのである。