静かなるデフレ

静かなるデフレ
著者:山田伸二
発行:東洋経済新報社


「失われた10年」を過ぎてなお低迷が続く日本経済。「脱デフレ」の大合唱が起こる中、本書では、あえてデフレのメリットを説き、それに見合った社会の構造改革を唱える。我々は、あまりにもデフレを悪者扱いしすぎていないだろうか?
デフレは決して悪いことばかりではない。物やサービスの値段が下がることで、我々の消費生活は、より豊かになった。
またデフレは「高価格体質」から「低価格体質」への転換の牽引力にもなっている。デフレには善悪の二面性があるのだ。
現在のデフレは、バブルの後遺症という後ろ向きの原因もあるが、規制緩和や技術革新、経済のグローバル化など、世界の流れ、構造的な変化による要因が大きい。
今のデフレは、いつの間にか新しい秩序に向かってデフレが進行する「クリーピング(忍び寄る)・デフレ」といえる。
1930年代、深刻なデフレに陥ったアメリカでは、大恐慌から脱するのに23年もかかった。それは、古い秩序を壊し、新しい秩序を作る必要に迫られたからだ。同じように、今日の日本も、社会の構造改革を迫られている。
従って、インフレターゲットのような貨幣政策によってデフレから脱却しようとしても効果はない。市場にお金を増やしただけでは経済は立て直せないのである。
デフレの特質をつかんで、堅調に業績を上げている企業は多い。その共通点としては、デフレを現実の問題として受け入れるという基本的な認識に加え、独自の技術を持ち、それを大切にして事業を広げている。利益が出るように原価を徹底的に抑える努力をしている。縮小均衡に陥らないように、新しい仕事に挑戦している。時代の変化に見合ったスピードで改革を進めているというのだ。