ウォーター・マネー

ウォーター・マネー

著者:浜田和幸著
発行:光文社

現在、「国際未来科学研究所」主宰し、主な著書に、『たかられる大国・日本』『チャイナ・コントロール』などがあります。
「20世紀は石油をめぐる戦争の時代だった。だが、21世紀は水をめぐる戦争の時代になるだろう」。
本書は、地球の「水不足」が引き起こそうとしている世界の大転換を、様々な角度から分析したものである。

国連の調査によれば、現在、世界人口の2割にあたる約13億人が、安全な水を得られない環境で生活している。
途上国の病気の8割は汚水が原因と見られ、特に子供は8秒に1人が死ぬほどの悲惨な状況となっている。
日本は、実は世界で2番目に多く「水」を輸入している。これは「仮想水(バーチャル・ウォーター)」と呼ばれるもので、日本に輸入される穀物や肉の生産に使われた水を指す。
人類が利用できる淡水は地球上の全水量の0.8%程度だが、人口の増加によって水の需要は増える一方だ。21世紀半ばには、全世界で70億人が水不足に直面するといわれている。
水不足に政治的対立が絡み合えば、水戦争の可能性は高まる。最も危険な地帯は中東だが、それにも増して不安定要因といわれているのが中国である。すでに深刻化している中国の水不足が世界の穀物価格の上昇を引き起こし、世界中の貧困国に食糧危機をもたらす可能性が高い。
地球上で枯渇しつつある水をめぐって、多くの企業がその利権の確保に躍起になっている。また、世界各国で水道事業の民営化の動きが活発化しているが、問題も多い。
このような「水危機」の中、日本は数々の最新技術で世界平和の維持に貢献できる。砂漠緑化や海水淡水化、水の大量輸送、そして水素エネルギー(燃料電池〉の技術である。
水素エネルギーの実用化が進めば、従来の石油政策は崩壊する。「水素を制する者は世界を制す」のである。