修身教授録

修身教授録

著者:森信三
発行:致知出版社

森信三は1896年に愛知県に生まれ、京都大学哲学科を卒業後、同大学大学院に籍を置きつつ、天王寺師範学校の専攻科講師となり、神戸大学教育学部教授、神戸海星女子学院大学教授を経て、1975年に「実践人の家」を建設し、92年に逝去しました。著書に『哲学叙説』『恩の形而上学』『学問方法論』などがあります。

人として生きていく上で大切なものは何か。全生涯を教育に捧げた人間教育の師父、森信三氏が奥深い真理を平明に語り下ろした名著です。

本書は、1937~39年の2年間、森信三氏が大阪天王寺師範学校(現・大阪教育大学)本科で行った講義を収録したものです。

この講義録は当時、検定教科書の内容に満足できなかった森氏が自ら口述し、生徒に筆録させたもので、それがその後、国語教育の第一人者である芦田恵之助氏の目にとまり、1940年、「修身教授録」として出版され、ベストセラーとなりその復刻版です。

地球上には様々な動植物が存在するが、我々はそのどれでもなく人として生まれたことに感謝するなら、我々は「人として生をこの世にうけたことの真の意義を自覚して」日々を送らねばならないのだが現代人は、人として生まれたことを当然のように思い、自らの生活に対する真剣さが足りないというのです。

今よりも一段上の地位に上りたいと、多くの人は思う。しかし上を見るだけで、具体的な行動を起こさないのでは、結局は何物も得られない。世の中の表面的な地位の高下に惑わされるのではなく、自分の目の前にあるものを確実に手にすることが大切だというのです。

物事というものは全て、形をなすことによってその効果が現れるこの「成形の功徳」は、現実界における"根本理法"のひとつとも呼べるもので、このことを日常生活に取り入れるかどうかで、人生の行く手は大きく違ってくるというのです。

謙遜と卑屈は紛れやすいが、真の謙遜とは「相手と自分との真価の相違に従ってわが身を省み、差し出がましいところのないよう、自分を処すること」である。その本質は、その人がどれだけ「真理や道というものに真剣に向き合うか」というところにあるというのです。

自らの力の一切を国家社会のために捧げ、自己の力を徹底的に生かし切って生きることにより、死生を超える道が開け、自分の使命に生き切ったということに対する無限の喜びが、死に対する恐怖を消し去るというのです。