宗教激突

宗教激突

著者:ひろさちや
発行:ビジネス社

ひろさちや氏は1936年に大阪生まれ、東京大学文学部印度哲学科を卒業し、同大学院人文科学研究科印度哲学博士課程修了し、宗教評論家、大正大学客員教授。『ひろさちやの般若心経88講』『仏教とキリスト教』『仏教と神道』『仏教と儒教』などの著書があります。

日本の宗教評論の第一人者が、国際政治の危機・紛争の裏に見え隠れする、「イスラム教対キリスト教」を平易に解説。イスラ
ム原理主義に対する本質的な理解が深まります。

現代世界は、アメリカの「ご都合主義」によって動かされていて、それは一部の人にとっては腹立たしいことであり、そう感じる
人々の中にイスラム教徒が多いことは否定できない事実だというのです。現代社会の「ご都合主義」に対して、イスラム教徒は彼らの「原理」、すなわちイスラム教でもって鋭く批判する。ここに、国際政治の危機国際社会の紛争の根本原因がある。宗
教の「原理主義」、とりわけイスラム教の原理主義の正しい理解なしに、現代国際社会の行方を予測することはできないというのです。

「原理主義」と「ご都合主義」は相反する概念である。宗教でいえぱ、イスラム教はユダヤ教と並んで原理主義の色彩が濃い宗教であり、キリスト教は、ややもするとご都合主義的に流れる宗教だというのです。

ユダヤ教やキリスト教、イスラム教は、共にエルサレムを聖地とし、このことからもわかるように、これら3つの宗教の関係は深く、キリスト教が"兄貴分"、イスラム教が"弟分"、そしてユダヤ教がその"源流"と言える関係で、キリスト教とイスラム教との対立は、「兄弟喧嘩」であるために、他人同士の喧嘩よりも"タチの悪い"ものになっているというのです。

キリスト教には「神は全ての人を愛しておられる」という基本思想があり、この思想が全ての人はキリスト教徒にならなければ
ならない」という考えにつながり、宣教師による布教活動を強力に推進することとなり、そしてキリスト教国家は、.国家権力の
尖兵として宣教師を利用し、布教先の国々を植民地化していったのです。

「一神教」は、信者以外の人間(異教徒)に対しては基本的にクールだ、という特徴があり、アメリカが、ドイツではなく日本に
原爆を落としたのも、ドイツにはユダヤ教徒やキリスト教徒が多く住み、日本にはほとんどいなかったからだというのです。