IT情報の虚と実
著者:本荘修二
発行:アスペクト
本荘修二氏は東京大学工学部卒業、ペンシルバニア大学経営学修士(MBA)。デイツーイーツー取締役、D2E2USA代表。社内起業研究会創設以来、起業家精神とイノベーションの研究成果を日米欧で発表している。主な共著書に『成長を創造する経営』『日本的経営を忘れた日本企業へ』などがあります。
ITバブルをめぐる悲喜劇は、アメリカの事例やマスコミの情報を頭から信じ込んだために引き起こされたIT情報の"本質"を見極めるための様々なヒントを提供してくれています。
IT(情報技術)に関する情報量は飛躍的に増加したが、日本では情報に振り回される状況が続いている。その原因は、「情報の不的確さ」と「情報の不適切な解釈」にある。そこから「米国のサル真似」や、逆に「日本流の導入」による大失敗が生じているのです。
今何よりも重要なことは、歪んだ情報や誤った理解から脱し、ITの「本質」を見極めることで、そのためにはITビジネスの"表層"の下にあるものにまで目を向ける必要があるというのです。
例えば、「B2C(企業と一般消費者とのeビジネス)は死んだ」と言う前に、まず日本のB2Cビジネスの実態を正確に認識する
必要があり、先行した米国と比べれば、税制や規制、手数料、物流コストなどの点で大きな違いがあり、日本におけるB2Cは米国とは全く異なる環境にあり、そもそも米国の真似をすること自体が無意味なのだというのです。
"IT先進国の米国に学べ"という"盲信"も捨てる必要があり、ゲームでは日本、ブロードバンドではオセアニアや韓国といったように、分野によっては米国以外の国が強さを発揮しているので、時代はすでに、世界のベストプラクティスに目を向ける「真にグローバルな視野」を求めているというのです。
これからのビジネスにITをどう活用していけばいいのか。重要なキーワードのひとつは「マルチチャネル」だ。すなわち印刷媒体・テレビなど他のメディアや、コールセンター、実店舗などと連携したシステムの中でのインターネットのビジネスへの活用であり、先が読めないeビジネス時代には、「仮説→検証→実行→仮説」のサイクルを小刻みに繰り返すことがマーケティングのポイントになり、ここでもネットを利用した「オンライン・リサーチ」が大きな武器になるというのです。