事業再生ファンド

「企業再生ファンド」
ダイヤモンド社
1,680円

和田勉著
著者紹介:1966年生まれ、早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、日本経済新聞社に入社、産業部や国際部などの記者を経て、98年から3年間テレビ東京に出向し経済部記者を務めた。01年からフリーの経済ジャーナリストに。著書に「買収ファンド」「企業再生ファンド」がある。


かっては「ハゲタカ」などと揶揄されたファンドビジネスだが、ここ数年で急速な進化を遂げ、今や日本経済再生の鍵を握る「再生産業」へと成長している。小泉政権下で誕生した官製再生ファンド「産業再生機構」もダイエー救済などで注目を浴びている。再生ファンド誕生の経緯と現状、そして今後の展望が経済新時代到来への予感と共に語らえる。

景気回復の広がりを受け、不良債権処理も進展しているが、その現場で活躍しているのが「事業再生ファンド」だ。ファンドビジネスの実態を追い続けてきた著者が日本経済回復の鍵を握る「再生インダストリー(産業)」の現状を報告する。

1997〜98年頃、買収で企業の経営権を掌握、改革して企業価値を高める「買収型のファンド」とまとめ売りで安くなった不良債権に投資する「不良債権ファンド」が日本に上陸した。これらのファンドの手法を組み合わせ、不振企業支援を目的に作られたのが「事業再生ファンド」だ。

現在、日本で活発に活動している外資系ファンドは、リップルウッド・フォールディングスとカーライル・グループだけだ。前者はプロの経営陣を送り込む典型的な米国型手法で後者は既存経営陣を活かす手法をそれぞれ特徴を持っている。

02年から日本でもフェニックス・キャピタルをはじめとする専門投資会社の設立が本格化した。中でもフェニックスはスピーディーな成長を遂げ、運用資金総額で国内勢トップとなっている。

みずほグループをはじめとする大手銀行勢、野村、大和、日興などの大手証券勢、三菱商事などの商社勢もそれぞれの強みを生かして惻々と再生ビジネス参入してきている。

03年4月に誕生した「産業再生機構」は当初は金融改革に伴う銀行の苦痛を和らげる”仕掛け”と見られていたが実際には厳格に債権の査定を行う「官製再生ファンド」としての機能をはたしている。

再生ビジネスの好機は今後3〜5年は続くと予想される。景気や投資環境も良好。未着手の投資案件も数多く、今後は特殊法人改革による民営化案件にも期待できるからだ。