日本の優秀企業研究

「日本の優秀企業研究」
新原浩朗著
日本経済新聞社刊
1,800円

著者紹介:1984年、東京大学経済学部卒業、通商産業省入所、同省にて産業政策関係の多くの法案作成などに携わる。米国ミシガン大学大学院経済学博士課程留学、経済産業研究所上席研究員を経て、2002年9月より、独立行政法人経済産業研究所コンサルティングフェロー、経済産業省情報経済課長、(IT政策担当課長)と兼任。

主要目次
序章 優秀企業はいかなるとくちょうをゆうしているのか
第1の条件 分からないことは分けること
第2の条件 自分の頭で考えて考えて考え抜くこと
第3の条件 客観的に眺め不合理な点を見つけられること
第4の条件 危機をもって企業のチャンスに転化すること
第5の条件 身の丈に合った成長を図り、事業リスクを直視すること
第6の条件 世のため、人のためという自発性の企業文化を埋め込んでいること
終章 私たちが輝いていた原点へ

優秀な企業に共通してみられる、そうでない企業には見られない特徴とは何か?
この素朴な疑問を徹底的に追求すべく、日本の業績優秀値企業をピックアップし、様々な角度から調査、研究を行った。
本書は、その結果導き出された優秀企業の条件を「企業経営の原点」として、各企業の具体的事例を挙げながら明快に説いたものである。

●優秀企業には、6つの条件が共通してみられる。
1)分からないことは分ける。
経営者が自社の事業範囲を明確に認識し、それ以外の事業は切り捨てる決断力と、事業の現場感覚を併せもっている。

2)自分の頭で考え抜く。
常識や成功談などを鵜呑みにせず、自らの頭で論理的に考え抜くことで、独自の戦略を導き出している。

3)自社を客観的に眺められる。
経営者が周辺部署や子会社といった「傍流」での経験を通じて、自社の問題点を客観的に見られる視点を持っている。

4)危機をチャンスに転化する。
会社がピンチに陥った際にも、その原因や自社の強みを冷静に考え抜いて対処することで、かえって発展へのチャンスをつかんでいる。

5)身の丈に合った成長を図り、リスクを直視する。
自ら生み出したキャッシュフローの範囲でもの岳にあった研究開発や投資を行っている。それによって思い切った投資判断が出来、リスク回避できる。

6)世のため、人のためという企業文化を持つ。
「社会のために奉仕する」という企業文化を、行動規範として持つことによって、従業員と経営陣が同じ方向性を共有している。

優秀企業に共通する6つの条件とは?
 多くの日本企業がアメリカ企業を見習い、カンパニー制、執行役員制、成果主義などを導入して構造改革を進めた結果、日本企業は「形」の上では変革を遂げたように見える。
 しかし、企業の「本質」は変わっていったのだろうか?競争力は強化されただろうか?
「米国式」の「形」を導入してみたものの、なんか違和感を覚えている経営者も多いのではないか。
 アメリカの優秀な企業を見ても、また日本で不況に負けず好業績を上げている企業を見ても、「形」が競争力の本質とは思えない。ならば時代環境の変化をふまえ、改めて事業の「本質」とは何かを考えることが、必要なのではないか。
 そうした観点から、日本で優れた業績を上げ続けている企業を財務データに基づいてピックアップし、さらに報道資料などの文献調査や聞き取り調査をおこなって、「優秀企業に共通してみられ、そうでない企業には見られない特質」を探した結果が6つの条件が抽出されたのである。

少し文章が硬いが花王、キャノン、ヤマト運輸、信越化学など不況に負けず高業績を上げている企業をかなり踏み込んで分析しているので、面白い。